普段、ほとんどつけることのないテレビ。そこに映し出されたのは衝撃的なあの場面…。9.11 飛行機がビルに突っ込む瞬間でした。目を疑いました。これが真実だと納得するまでに長い時間がかかりました。
世界はどうなってしまうのかという恐怖と不安でいっぱいでした。異国の地にやってきたばかりなのに…。また、私はこのまま音楽を勉強していていいのだろうか…という気持ちにもなりました。
国と国、文化と文化が交わる時には必ず軋轢が生じます。それを暴力や破壊行為で自己主張することに怒りと悲しみでいっぱいになりました。洋の東西、肌の色、宗教…全てを超えてわかり合うことは出来ないだろうか…と、真剣に考えていた時に作ったのがこの曲「鐘~平和への祈り~」です。
日本のお寺の鐘の音、ヨーロパの教会の鐘…ともに私の中では「平和」そのものなんです。そして、世界中で「鐘の音」が平和の音色として響き渡ることを願って書きました。ツィンバロンで鐘の音を表現するのは少し無理があるかもしれません。この曲は、ブダペストだけでなく、ヨーロッパの音楽祭、また中国で開催された世界大会でも演奏させてもらいました。また、そういう私の想いに理解をしてくれた先生方やたくさんの友人達が、私とともにこの曲を拡めてくれました。
子供の頃、遊び疲れて家に帰る頃になるとお寺から聞こえてくる鐘の音も、留学中、練習でクタクタになった頃、いつも聞こえてくる近所の教会の鐘の音も、それらは私を平和で穏やかな気持ちにさせてくれました。