「コンサート・ツィンバロン」
ツィンバロンは、大きな台形の木の箱にたくさんの金属の弦を張り、両手に持った小さなバチで弦をたたいて演奏する楽器です。
初めて見る方には、
「ピアノの中に張られている弦を、鍵盤を使わずに直接バチでたたいて演奏するような楽器」
と説明すると、少しイメージしやすいかもしれません。
ハンガリーをはじめとする中東欧で発展し、民族音楽の世界だけでなく、クラシック音楽、現代音楽、映画やテレビの音楽など、さまざまな場面で使われてきました。
キラキラした音から、深く響く音まで
ツィンバロンの魅力のひとつは、その音色の豊かさです。
小さなバチで金属の弦をたたくと、キラキラと光がこぼれるような音、鐘のように澄んだ音、鋭く力強い音、そして静かに歌うような柔らかな音まで、さまざまな表情が生まれます。
同じ一つの音でも、弦をたたく場所やバチの使い方、力の加減によって、音色は大きく変わります。
ピアノのように和音を響かせることもできれば、細かな音を素早く連続させたり、旋律を歌わせたりすることもできます。
両手に持ったバチで演奏します
ツィンバロンにはピアノのような鍵盤はありません。
演奏者は楽器の前に立つ、または座り、両手に細いバチを持って、たくさん並んだ弦を直接たたきます。
弦は一見すると複雑に張られていますが、それぞれに音程があり、演奏者はその位置を身体で覚えながら演奏します。
左右の手を自在に動かしながら旋律や和音、伴奏を組み合わせていくため、二本のバチだけで、とても大きな音楽の世界を作ることができます。
ハンガリーから世界へ
現在の大型のコンサート・ツィンバロンは、19世紀のハンガリーで発展しました。
ハンガリーの音楽文化と深く結びついた楽器ですが、その可能性に注目した作曲家たちによって、次第にクラシック音楽の世界にも取り入れられていきました。
現在ではオーケストラ作品や室内楽、現代音楽、映画音楽などにも登場し、民族楽器という枠だけでは語ることのできない楽器になっています。
僕にとってのツィンバロン
僕は長年、この楽器と向き合ってきました。
ハンガリーやスロバキアでツィンバロンを学び、クラシック音楽をはじめ、現代音楽、オーケストラ作品、即興など、さまざまな音楽を演奏してきました。
けれども僕にとってツィンバロンは、伝統的な音楽を演奏するためだけの楽器ではありません。
自分自身の音楽を生み出すための、大切な「声」のひとつです。
金属の弦から生まれる独特の響き。
一音の中に含まれるたくさんの倍音。
バチが弦に触れた瞬間に生まれる強さと繊細さ。
そうしたツィンバロンならではの音を生かしながら、僕は自分の作品を作っています。
まずは、音を聴いてみてください
ツィンバロンは、言葉だけではなかなか伝えきれない楽器です。
「こんな音がする楽器だったんだ」
初めて聴いた方から、そんな言葉をいただくことも少なくありません。
このサイトでは、ツィンバロンの響きを生かして僕が制作してきた作品や録音をご紹介しています。
楽器の歴史や名前を知らなくても大丈夫です。
まずは一度、その音を聴いてみてください。
そこから、ツィンバロンという楽器の世界、そして僕がこの楽器から生み出している音楽の世界を感じていただけたら嬉しく思います。
ツィンバロン奏者・作曲家 斉藤 浩